中国・天津一日遊  2009年 8月 15日



北京−天津間に開通した高速鉄道「京津城際軌道交通」に乗って天津日帰り旅行をしました。高速鉄道開通前
の在来線の天津行き列車は北京駅から発着していましたが、高速鉄道の北京側発着駅は北京南駅です。2009年
9月に地下鉄4号線が開通して北京南駅に接続しましたが、私の旅行時は開通前で北京南駅へはタクシーを利用
しました。タクシー代は崇文門から片道24元で、天津までの高速特急一等席片道運賃69元に比較して高く感じ
ましたが、日本円に換算したらタクシー代もたったの360円にすぎません。高速特急一等席運賃の69元≒1050円
が破格の値段だと思います。新線を建設し、駅舎も新築し、ドイツ製(ライセンス生産)の高速列車を導入し、
この運賃で経営が成り立つのか不思議です。(追記参照

タクシーに乗ってそろそろ北京南駅に着くだろうと思った頃、前方に大阪ドームみたいな巨大な建築物が現れ
ると、タクシーはループ状の高架道路に乗り入れてをぐるぐる回りながら巨大建築物の三階あたりの高さまで
傾斜を登り、建築物の入り口に停車しました。それが北京南駅の駅舎でした。そういった訳で北京南駅全体の
外観写真を撮り逃してしまいました。代わりに駅構内の案内板を紹介しますので、この形状から大阪ドームも
どきの外観を想像してください。


北京南駅平面図



切符売場で切符を買いました。電光掲示板で乗りたい列車の列車番号を確認し、列車番号と一等/二等の選択、
購入枚数をメモに書いて窓口に差し出すのが確実です。二等席片道切符は58元、一等席片道切符は69元です。
たったの11元の差で一等席なので迷わず一等席にしました。


切符売場



中国の鉄道乗車の仕組みは航空機と同じで、切符を買ってもすぐにホームへ行くことは出来ません。切符を買っ
たら待合い席で列車の発車時刻を待ちます。発車15分前にホームへ行くゲートが開きます。待合い席は一等車
と二等車の乗客で別れています。


二等車客用待合い席



一等車客用待合い席



駅構内の北半分は、現在建設中の北京−上海間高速鉄道のためにリザーブされています。


駅構内の北側半分



発車時刻が近づくと改札機に列ができます。全席指定なんだから並ぶ必要はないと思いますが、並ばずにいら
れないのが中国人の国民性でしょうか。


ホームへのゲートに並ぶ行列



自動改札機使用注意事項



 1.お客様は正しい列車番号を確認して下さい。各列車の発車15分前に改札を開始します。
 2.改札機の前で改札を待つ時、お客様は黄色い線の外側に立つようお願いします。
 3.お客様は切符を右手に持ち、切符の面を上に向けて下さい。
 4.一枚を挿入し、切符が弾き出されるのを待った後、切符を取って通過します。
 5.一枚の切符で一人が通過します。切符を重ねて放たないで下さい。
 6.切符が改札機から弾き出された後、お客様は速やかに切符を取り通過して下さい。
   通り道の中に停留してはいけません。折返し厳禁。
 7.子供を連れて通過する時は、子供は前、大人は後にして下さい。大きな荷物は広い通路を歩いて下さい。


改札開始



ホームへ



京津城際軌道交通の和諧号は、ジーメンスの技術を導入したCRH3型でした。隣のホームには新幹線の技術
を導入したCRH2型が停車していましたが、これは天津ではなく別の方面へ向かう列車と思われます。


和諧号(CRH3型)



和諧号(CRH2型)



一等車に乗り込むと、入口にサービスのミネラル・ウォーターが置いてありました。このサービスが二等車に
もあるかどうかは知りません。


ミネラル・ウォーターのサービス



一等席



車内案内を見るとビュッフェ車が連結されているので、見てきました。たった30分の走行時間で、利用客がい
るのでしょうか。先頭車輌はラウンジ席になっていて運転席の後方から前方を覗き見る事ができます。切符の
種類には一等席の上に特等席(99元)がありますが、このラウンジ席がその特等席だと思います。


ビュッフェ



ラウンジ席



最高時速は330kmで、北京−天津間120kmをノン・ストップ30分で結びます。車窓の風景は、杭州−上海の江南
の田園風景に比べると殺風景なものでした。ただ、今回の旅行では写真を撮り逃してしまいましたが、北京と
天津の中間あたりで、線路から北側に(天津行きなら進行方向左側)数百メートル離れた畑の中に忽然とゴシッ
ク様式の大聖堂が姿を見せました。あんな田舎になぜあのような立派な教会があるのか不思議です。


最高速度330km



車窓の眺め



天津到着



日本の自動改札機は、開閉ゲートの向こうに切符の取り出し口がありますが、中国の改札機は開閉ゲートの手
前に切符の取り出し口(オレンジ色の部分の上面)があり、切符を抜き取るとゲートが開きます。これなら乗
客が切符を取り忘れたまま通り過ぎる事を防止できます。これは日本の自動改札機よりも賢いシステムです。


地球防衛軍本部



天津にある地球防衛軍本部を紹介します。中央にニョキッと突き出ているのは巨大ロボットの頭部で、宇宙怪
獣が現れると、この建物はカパッと開いてロボットが発進する仕組みです。というのは嘘で天津駅の駅舎です。


天津駅の切符売り場



地球防衛軍本部の建物の左端に北京行き列車の券売所があります。私は天津へ着いて、まず帰りの北京行きの
切符を買いました。そして帰国してから気づいたのですが、北京で往復の切符を買っておけば、二度も行列に
並ぶ必要はなかったのでした。2004年に上海から蘇州の切符を買った時、当時のガイド・ブックで「中国の鉄
道の券売システムはオン・ライン化されていないので、ある駅から乗車する切符はその駅でしか買えない。つ
まり、一つの駅で往復の切符を買う事はできない」という記事を読み、上海駅で上海→蘇州の切符を買って、
蘇州に着いてから帰りの蘇州→上海の切符を買ったのでした。時速300km超の高速鉄道を運行しながら、北京南
・天津の両駅の券売システムがオンラインで結ばれていないとは考えられないので、北京南駅でも天津→北京
南の帰りの切符は売っていると思います。たぶん。


海河広場地面平面図



地球防衛軍本部周辺の地図です。左下の「世紀鐘広場」を経て「解放橋」を渡りました。

ところで天津市の地図ですが、私は天津駅到着後に、駅の売店でA2紙1枚を折りたたんだ地図を買いました。
しかし、この地図は広い天津市全域の全図で、観光名所の集中する天津駅周辺の拡大図が地図の端にわずかに
しか載っていませんでした。天津市の地図は、中国の電子地図サイトの「MapABC」で、天津駅周辺の自分が行
く予定の地域を表示させて、プリント・アウトして紙をつなぎ合わせるのが良いと思います。


世紀鐘



昔、「世紀末」に引っかけた名前のロック・バンド(私はそのボーカリストのお笑いの才能を高く評価します
が)がいましたが、彼らが西暦1999年に解散したところを見ると、1999年が20世紀末で2000年から21世紀にな
ると勘違いしていたと思われます。世紀とは西暦を100年ごとに区切って数字を付ける年数の表記で、西暦とは
イエスが生誕した(と信じられている)年を西暦1年とする年数の表記です。従って1世紀は、西暦1年から始
まる100年間、つまり西暦1年〜100年の間であり、2世紀は西暦101年〜200年、3世紀は西暦201年〜300年、と
なると20世紀は西暦1901年〜2000年で、21世紀は西暦2001年からスタートする理屈です。

この時計台の名前が「世紀鐘」である事から、世紀の切り替わりを記念して建てられたのでしょうが、文字盤
の年数が2000年となっています。20世紀の終わりを記念して建てた事になりますが、記念するなら終わりより
始まりを記念する方が自然ですから、中国人も21世紀が2000年から始まると勘違いしていると推測します。


解放橋遠景



解放橋近景



解放橋の可動部分構造



解放橋を渡り解放北路を進むと、旧租界地区に入ります。古風な西洋建築が並んでいますが、そのほとんどが
改修工事中でした。すべての工事が完了すれば魅力的な観光名所になると思いますが、現時点では工事現場。


解放北路



建築物



解放路と赤峰道の交差点で右へ曲がって赤峰道を進みます。やがて和平路へ出るはず。


赤峰道



建築物



天津随一の繁華街の和平路に入りました。


和平路(歩行街南東側)



和平路の中でも最も繁華なのは浜江道との交差点付近。周囲は歴史的建築物が林立しています。


浜江道



上の写真は浜江道の真ん中に置いてある馬車の銅像です。


聖奥商廈



天津勧業場



和平路(歩行街北西側)



南市食品街に到着、「食品街」と言っても食料品店街ではなくレストラン街です。


南市食品街遠景



南市食品街近景



南市食品街内部一階



南市食品街内部二階



私は「狗不里包子」は店の名前の固有名詞だと思っていましたが、ここに来るとどの店も「狗不里包子」がメ
ニューにあり、「狗不里包子」は店の名前ではなく料理名の固有名詞だと知りました。ここへ来たら天津名物
の料理店「狗不里包子」で食べようと思っていたのですが、どの店も「狗不里包子」があり、迷ったあげく、
店の外に掲げてあるメニューの看板が目に付いた店に入りました。店の名前は「津沢福」で、南市食品街の建
物の内側と外側の両方に店の出入口があります。写真は建物外側の出入口です。


「津沢福」外側入口



店内



メニューの看板(高解像度)



狗不理包子とお粥



南市食品街の隣の敷地に南市旅館街が建設中でした。というより建物は完成していました。しかし、入居する
ホテルの看板を付けるとか、ホテルの内装とかの工事の始まる様子がありません。元々、余裕のある工事日程
を立てていて建物完成から内装工事開始の間に日数があるのか?建物は完成したがテナントを募集しても集ま
らないのか?路面の荒れ具合を見るとバブル崩壊の臭いがします。


建設中の南市旅館街



南市食品街から北上して鼓楼商業街に向かいました。清の時代の街並みを再現した商店街です。


鼓楼商業街の門



鼓楼遠景



鼓楼近景



鼓楼は修理工事中でした。鼓楼から東へ延びる鼓楼東街へ向かいます。こちらも清の時代を再現した商店街で
す。


鼓楼東街





天津市基督教会 倉門口堂



その途中に教会があり、門の前で二人の女性が「福音、福音」と言いながらビラを配っていました。中に入っ
て良いか聞くと「進来、進来」と言って入れてくれました。「福音」と言うからには、プロテスタント系の教
会でしょう。

街の一般人に対して布教活動をしている二人を見て、私は意外に感じました。これまでに見た中国の他の都市
の教会は普段は門が閉じられ、礼拝日に信者だけが集会を行う為の施設であって、一般人を対象に布教活動を
しているのを見た事がないからです。これは中国の基督教会が閉鎖的なのではなくて、中国政府がキリスト教
が一般人に広まらないよう圧力を掛けているからでしょう。この教会が堂々と布教活動をしているのは、天津
という街の土地柄なのでしょうか。


倉門口堂 入口



倉門口堂 敷地内



倉門口堂 聖堂



聖堂から入口を振り返る



倉門口堂の猫(高解像度)





鼓楼東街



鼓楼東街の東の端に文廟がありますが、工事中なのか門は閉ざされていました。


文廟 外観



文廟 入口



このまま帰るのは悔しいので、門の扉と地面の間の10cmほどの隙間から、内部の写真を撮りました。(^_^;


文廟 内部



文廟を過ぎて北に曲がると古文化街です。またまた清代の街並みを模した商店街です。鼓楼からここまでこれ
ばっかり。どれが一番最初に始めたのかは知りませんが、同じような街並みばかりを作る事が観光資源として
有用なのか、疑問を感じます。


古文化街の門



古文化街



古文化街の中心に天后宮があります。天津民俗博物館の看板も掛かっていますが、中に入っていっても天后宮
のお堂ばかりで、博物館らしきものは見つかりませんでした。もしかしたら「お堂」と思って通り過ぎた建物
のどれかが、博物館として民俗学の収集物を展示していたのかもしれません。


天后宮 入口



天后宮 門



天后宮 前殿



天后宮 風尾殿



天后宮を後にして、海河の岸に出ました。下流方向に金湯橋が見えます。


金湯橋遠景



金湯橋は築百年の鉄骨構造橋だそうです。


金湯橋



金湯橋の橋桁の端



金湯橋を渡っている時、橋桁の端に円周形状の切れ目がある事に気づきました。どうやら、東岸側の橋桁の一
部が水平方向に回転して船を通す仕組みのようです。


金湯橋の回転部分



金湯橋を渡ったところに、教会らしき建物がありました。しかし搭のてっぺんに十字架はないので、「元教会」
の建物のようです。


元教会建築?





海河と進歩橋



金湯橋のたもとから、建国道を通って一直線に天津駅に戻りました。が、建国道の周囲はほとんどが工事中で
味も素っ気もありませんでした。遠回りでも海河沿いの遊歩道を歩いた方が風情はあったと思います。


天津駅構内



一等車乗客用待合い席



8月に一日歩き回って疲れました。天津市観光は、地下鉄2号線と3号線が開通してからが良いと思います。





追記(2010/04/10)

中国の経済情報サイト「
経済観察網」に、2010年4月5日付けで次の記事が掲載されました。見出し「大躍進経
済算(貝長) 京津高鉄運行一年虧7億」の冒頭の「大躍進〜」はこのコラムの名称で「京津〜」以降が見出し
の本体でしょう。「虧」は日本語でも虧損(きそん)という熟語があり、損をするという意味です。

記事の冒頭を意訳すると「中国で最初の高速鉄道旅客専用線である京津高速鉄道は2008年8月1日の開通以来一
年あまりの期間で、損失額は7億元を超過した」と言う意味でしょう。

記事の本文によると、年間3000万人の乗客を見込んだが実際の乗客は1870万人で収入は11億元だったそうです。
黒字化するには運賃を7割値上げすれば良い計算になりますが、その場合でも二等席運賃は約100元で、新幹
線に比べればまだまだ安いです。



経済観察網記事





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