蘇州園林探訪 2010年 5月 30日 〜 6月 3日


蘇州に残る中国古典庭園を蘇州園林と呼び、蘇州市内では8つの園林(退思園は郊外にある)が世界遺産に指
定されています。そのうち"耒禺"園、獅子林、網師園、滄浪亭、環秀山庄、芸圃、留園、を見学してきました。
一番有名な拙政園は入園料が70元もするので、門の前を通るだけにしました。直近の為替レートで換算すると
70元≒1000円を入場料も払えないほど貧乏旅行ではありませんが、北京の違和園でさえ入場料は60元なのです
から、中国国内の基準で言っても70元は高すぎると思います。

それに私は中国古典庭園の価値はよく判りませんので、庭園見学にはそれほど執着していません。世界遺産の
古典庭園がほどよく市内に散らばっているので、庭園見物がてらに市内を散策するのが今回の目的です。庭園
見学は、観前街の北東の平江区にある"耒禺"園と獅子林から始めました。トップ・ページで紹介した水路風景
のほとんどは"耒禺"園を捜して歩き回っている時に撮ったものです。

ところで話は変わりますが、蘇州園林探訪で私の得た教訓をお伝えしておきます。庭園には入口に観光バスの
駐車できるスペースがある庭園とない庭園があり、前者は中国国内の団体観光客が観光バスで乗り付け混んで
います。庭園の観賞には静謐さが必要であり、庭園そのものがどんなに素晴らしくても大勢の観光客でごった
返していては風情は台無しです。混んでいたのは獅子林、拙政園、留園、空いていたのは滄浪亭、環秀山庄、
芸圃、普通の人出だったのは"耒禺"園、網師園です。人気のある庭園は朝一番に見学する事をお勧めします。

観前街の書店で地元出版社の地図を買った事は述べましたが、その地図もあまり詳細ではありませんでした。
下の図の左側は、トップ・ページの冒頭で紹介した電子地図の"耒禺"園周辺地図、右側は買った地図の同じ場
所です。どちらの地図も、"耒禺"園の南側の小新橋巷と大新橋巷に沿って水路が存在します。しかし"耒禺"園
北隣の小柳枝巷と大柳枝巷については、電子地図には水路が存在しますが、買った地図には存在しません。こ
れは電子地図の方が合っていました。買った地図は全ての水路が記載されていないのです。実際の蘇州の街は
地図に記載されている以上に水路が縦横に走る水郷でした。


"耒禺"園の周辺地図



私は、買った地図を見ながら北の方から"耒禺"園を捜して歩いたので、小柳枝巷を東へ進んでしまいました。
道は行き止まりになっても 耒禺 園らしき施設は見あたらず、ふと水路の向こう岸を見ると遊覧船が並んでい
て客待ちをしており、そこが"耒禺"園かもしれないと思って道を引き返しました。

"耒禺"園の遊覧船乗り場



通済橋


"耒禺"園へ行くには、この橋の掛かっている水路に沿った道を東へ進みます。やがて水路沿いに"耒禺"園の入
口が現れます。入園料は20元です。この入口を見る水路脇とひっそりと佇む閑静な庭園に見えますが、この門
の向こうの東側にも駐車場付きの入口があり、観光バスが停車して団体観光客がぞろぞろと入場していました。



"耒禺"園 正門


"耒禺"園 全景図


三方を水路に囲まれた庭園ですが、全景図を見ての通り庭と言うよりお屋敷です。2つ上の写真の正門は、全
景図では左下隅にあり、写真の右端に写っている水路は全景図では手前に位置します。全景図の右側と上側も
水路で、遊覧船乗り場があったのは上側の水路です。


"耒禺"園 遊覧船乗り場


園内の北端に遊覧船乗り場があります。船賃は一人10元。桟橋へ出る通路を通して、水路の北側の小柳枝巷の
道ばたに佇むおじいさんが見えますが、私が道に迷って小柳枝巷から遊覧船を撮った時も、あのおじいさんは
あの場所に座っていました。それから1時間は経過していますが、同じ場所に微動だもせずに座っています。


"耒禺"園 載酒堂


"耒禺"園 城曲学堂


"耒禺"園 山水間


"耒禺"園 池と橋


"耒禺"園 織簾老屋



"耒禺"園から北上し、東西方向の水路沿いに東北街を西へ進んで、拙政園の正門前に着きました。水路端に遊
覧船乗り場があります。前述の理由で拙政園は見学せず、正門の写真を撮っただけで通り過ぎ、獅子林へ向か
いました。

拙政園 正門



拙政園前の遊覧船乗り場


遊覧船出航


遊覧船出航の動画は「動画頁 蘇州編 1」にあります。

この船の船頭はおばあさんでした。"耒禺"園の遊覧船の船頭もご老人ばかりでした。老人の良いアルバイトに
なっているようです。同じように櫂を漕いでいるのに、船は最初に方向転換してから前進を始めます。そこそ
この熟練は必要なようです。

こんな小舟でも軽トラックくらいの荷物は積めますが、それを老人や女性の力でも動かせるというのが運河の
利点です。鉄道や自動車が発明される前の時代に、洋の東西を問わず蘇州でも大坂でもベニスでも、物資の集
散する商業都市に運河が張り巡らされたのは、そういう理由からです。


拙政園は門の前を通り過ぎるだけにして、次は獅子林へ入りました。蘇州に日帰り観光に来て、世界遺産の庭
園をどこか一カ所見学するのなら、獅子林がよいと思います。入園料は30元です。ただし、全景図に描かれて
いるように入口前には駐車場があり、日中は観光バスで団体観光客が押し寄せますので、行くなら朝一番です。

獅子林 全景図



この庭園は太湖石をふんだんに使っており、それらの石が獅子のように見えるのが名前の由来だそうです。下
の写真の石など、三匹のライオンがこちらに跳びかかろうとしているように見えない事もありません。

獅子林 太湖石


獅子林 池



池の畔に太湖石をふんだんに使った築山があり、この中に立体迷路が仕掛けられています。それほど大きな築
山ではありませんが、山を上がったり下がったり洞窟に入ったり出たりで、一度入るとなかなか出られません。
下の写真で三つの洞窟がありますが、真ん中はダミーですぐ行き止まりですが、左の穴と右の穴は、紆余曲折
を経ながらも一本の通路でつながっています。左から入って右から出てくるまでを動画に撮りましたので、獅
子林築山の迷路抜けをヴァーチャル体験してください。

獅子林 迷路の入口と出口


真ん中はすぐに行き止まりのダミーの洞窟ですが、左の洞窟を入って築山中の通路を延々と進むと、ついには
右の洞窟から出てきます。動画は「動画頁 蘇州編 2」にあります。


獅子林 湖心亭


獅子林 古五松園


獅子林 揖峰指拍軒


獅子林 滝



次に訪れたのは網師園です。私は十全街を西進して帯城橋路を南下して闊家頭巷を東へ入り、網師園南面の正
門から入りましたが、網師園北側の裏門は十全街に通じており、そちらにも入口があるのでした。十全街を西
へ向かって歩いている時は、「帯城橋路を南へ曲がって闊家頭巷を東へ入って」と考えていたので、網師園の
裏門への近道がある事にぜんぜん気付きませんでした。(^_^;

闊家頭巷



帯城橋路から闊家頭巷に入ってしばらく進むと土産物屋の商店街になり、道幅はクルマが通れないほどせまく
なります。土産物屋街を抜けた所に網師園の正門があります。

土産物屋街





網師園 正門



ここも庭園というよりお屋敷でした。観光バスが乗り付けられないせいか団体客がおらず、園内は静かです。


網師園 萬巻堂


網師園 看松読画軒


網師園 小山叢桂軒


網師園 池と月到風来亭


網師園 裏門


上の写真が北側の裏門です。私はこの門を出て十全街へ出ました。この写真を見ると券売所がないので、この
門は出口専用かもしれません。門の左の緑の案内板に「←網師園」と表示してあるので、矢印方向に園の外壁
に沿って回り込んでいけば南側の正門に辿り着くと思われます。


次に行ったのは滄浪亭です。十全街を西進して人民路との交差点を南へ曲がって人民路を南下すると、人民路
から東へ入る水路沿いの路があります。その路を入って東に進むと水路の向こうに滄浪亭の門があります。


人民路から滄浪亭へ行く道


滄浪亭 正門



ここは、お屋敷というよりは庭園です。池と築山を中心にして建物が配置されています。築山の上に建つ簡素
なあずま屋の名前も「滄浪亭」でした。


滄浪亭 池


滄浪亭 築山と滄浪亭


滄浪亭 翠吟瓏


滄浪亭 看山楼


看山楼一階の洞窟部屋は趣向が凝っていると思います。部屋の入口の上に「印心石屋」と書いてありました。

滄浪亭 看山楼の一階(印心石屋)


滄浪亭 看山楼の二階


滄浪亭の中庭


滄浪亭の家具




環秀山荘は、蘇州刺繍研究所という施設の敷地の中にあります。地図を頼りに景徳路を西に進みましたが、環
秀山荘があるはずの場所にあったのは蘇州刺繍研究所でした。意を決して正門の検問所で聞くと、蘇州刺繍研
究所の検問所は入場券の券売所でもありました。後でガイドブックを見ると、環秀山荘は蘇州刺繍研究所の中
にあると書いていました。

蘇州刺繍研究所正門


環秀山荘 入口


この庭園は、敷地が南北に細長い「鰻の寝床」なので、見学経路は単純で迷いようがありません。入口から一
番奥まで歩く間を動画に撮りました。動画は「動画頁 蘇州編 1」にあります。


環秀山荘 有穀堂


環秀山荘 築山


環秀山荘 問泉亭


環秀山荘の西側の外壁


庭園の西側は一見建物があるようですが、建物に似せた壁です。二階の窓の内側は人が1人通れるくらいの廊
下はあるかもしれませんが、部屋はありません。壁を建物に似せて、ここを庭付きの大邸宅のように見るのが
目的と思われます。


芸圃は住宅街の路地裏の中にあり、大通りからも離れているので客も少なく、八大庭園の中で一番の穴場です。
判りにくい場所にあるので、辿り着けるかどうかが問題です。

芸圃 入口


芸圃 中庭


芸圃 博雅堂


芸圃 池


芸圃 池の鯉


芸圃 池の美女


広告か何かの写真を撮影するカメラマンとモデルがいました。他の庭園だと見物人が取り囲み、子供がモデル
の後に回り込んでVサインをして、とても撮影どころではないでしょう。カメラマンが撮影場所としてここを
選択したという事は、芸圃はいつでも閑散としているのでしょう。


最後に留園に行きました。蘇州市内の八つの世界遺産の中で、唯一城壁の外側にあります。旧市街北西に位置
する○門(○は門構えの中に昌が入った字)を出て楓橋路を西へ進むと寒山寺に着きますが、その途中、楓橋
路の一本北側の道路で楓橋路と平行に走る留園路沿いに、留園はあります。観光バスが乗り付けて大勢の団体
観光客がいました。

留園 入口


留園 池


留園 冠雲峰


留園 林泉耆碩之館


留園 欄間の透かし彫り



園内の何カ所かで中国伝統音楽の実演が行われていました。ここの入園料は40元と、他よりちょっと高いので
すが、演奏者の出演料を考えれば納得です。琴実演の動画は「動画頁 蘇州編 1」にあります。蘇州弾詞実
演は「動画頁 蘇州編 2」にあります。


留園 琴実演


留園 蘇州弾詞実演


ホテルに戻ってからテレビを見ていると、上の写真のような三弦の男性と琵琶の女性の組み合わせによる演奏
を放送していました。この組み合わせは三弦奏者の男性と琵琶奏者の女性がたまたまこの場でジョイントした
のではなくて、こういう様式の伝統音楽ではないかと思い帰国してから調べたところ、「蘇州評弾」という伝
統芸能がある事を知りました。「評話」と「弾詞」という二つの伝統芸能を合わせて「評弾」と呼ぶそうで、
「評話」は語り、「弾詞」は楽器を弾きながら歌う事だそうです。上の写真の演奏は「弾詞」の方でしょう。

ところで演奏が始まっても周囲の中国人客は私語をやめません。奏者の男性も困ったような表情です。別に演
奏を聞くために集まっているのではなく、そこに座席があるから休息するために座っていて、「演奏なんか勝
手にやってよ」というつもりで私語に夢中なのでしょうか。


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